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千早茜・作 「魚神」

公開日: : 書評記事

 こんにちは。今回紹介させていただく本は、千早茜「魚神」です。
 生々しく、それでいてアクのない表現が光る今作品。ある本土から離れた島の中で、慾深い老婆に、遊廓へ売られること前提で拾われた二人の姉弟の物語です。
 舞台は近代日本。その島には戸籍というものが存在せず、自治社会として、極めて閉鎖的な環境で放置されています。その中で、遊廓だけが華々しく営まれていました。姉弟二人は互いの運命を知りながら、互いに依存し、求め合っています。
 二人は幼いころから色白で器量がよく、主に商売道具として、島民たちからいやらしい目で見られていました。姉は馬鹿にされ、弟は乱暴にさらされる。そんな日々の中で弟は薬作りの才能を目覚めさせ、その薬の良質さから島の人から一目置かれる存在になります。
 しかしある日二人は弟が陰間(男色を扱う茶屋)に売られることで離れ離れになります。
 この話は姉の視点から語られるのですが、弟に対する姉の気持ちは複雑です。そっけないようで求めている。存在を感じたがっている。そしてその後、遊廓に売られた姉は遊女としての勤めを果たしていき、次第に弟がその影をちらほら見せ始める。その過程は姉の無機質な視点から、ある種、淡々と書かれています。セックスシーンも極めて客観的です。後半かなり血なまぐさい話しになるのですが、淡々とした文体と、それでいて力強い展開が読者を惹きつけます。
 この作品を読んでいると、人の存在の重さという物を考えてしまいます。作品に出てくる「商品」である人々は、倫理観の低さから、存在そのものが軽いです。使い捨てられる運命を享受しています。そういう社会があったことを読者は突きつけられるのです。
 そんな中、互いを求め合う姉と弟はどうなるのか、二人の生きる道を、是非見届けてみてください。

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