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朝比奈あすか「憂鬱なハスビーン」

公開日: : 書評記事

 今回紹介させていただくのは、朝比奈あすか・作「憂鬱なハスビーン」です。
 生き方というものは人それぞれですが、コミュニケーション力というものは何処にでも応用が利く重要な能力です。この作品の主人公は、その力が育たなかったために、大変な苦労をするのです。
 主人公は、元は東大出のOLで、結婚と共に退社して失業保険を貰って生活していました。
 東大出、結婚退職。これだけ聞くと、さも順風満帆な人生に聞こえるかもしれません。しかし主人公はそうではありませんでした。
 主人公は少女時代、ある学習塾に必死で勉強して入塾し、勉強ばかりして過ごしていました。友達はほとんどできず、ただただ勉強という行為にのめり込んでいきました。成績はどんどん上昇し、結果東大に入学するのです。
 しかしある日再会した、当時目標にしていた秀才に「君は、世間の上澄みを生きてきたんだろうけど、どう見ても今、幸せな顔してないじゃん」と核心を突かれるのです。その秀才はかつての面影がないほどに落ちぶれていました。主人公はその姿に自分を重ねたかもしれません。
 主人公は義母とも上手くいかず、実母には仕事をしろとせかされます。コミュニケーション力の欠如から、近所付き合いも乏しく、何より子供を作りたがりません。狭い世界で勉強ばかりの単調な人生をおくっていたため、自分が子供を育てる未来を想像できないのです。旦那は直向きで互いに愛し合っていますが、主人公は己の不器用さに押しつぶされ、結局幸せになれないのです。
 単調な人生は視界を狭めます。実は細かいところにも幸せの種は転がっているのかもしれません、それを上手く掴めない主人公の悲劇性が際立っています。共感を持てるかもしれない、と少しでも思った方、是非手に取ってみて下さい。

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