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レマルク・作「西部戦線異状なし」

公開日: : 書評記事

 今回紹介させていただくのは、レマルク・作「西部戦線異状なし」です。
 紹介なんてするのも憚られるほどの傑作ですが、古典作品だけになかなか手を付けられない方も多いと思います。是非一度この作品を読んでカルチャーショックを受けていただきたいです。
 舞台は第一次世界大戦の西部戦線。主人公はドイツ人の青年で、教師の強い促しにより、18歳で志願兵として戦線に送り込まれます。
 それ以来、彼の人生は今まで教えてもらったことがまるで役に立たない舞台に立たされてしまったのです。
 青春は影を失せ、生と死の狭間で生きていかねばならない。隣ではうめき声を上げながら死んでいく者、負傷して片輪になり苦しんで死んでいく者、砲弾が火を噴き、銃弾の数センチのずれで生死が分かれる、偶然に支配される戦場。そんな中、掩壕の中で長い日々を生きなければならない兵士たち。
 思えば、我々が報道で知らされる戦争というのは、戦争の悲惨さを本当に伝えているでしょうか。もちろん血が絡む映像など刺激が強すぎて、TVや新聞でそうそう見せれるものではありません。しかし、もし私たちがそれを見せられないまま戦場に送りだされたら、相当な隔たりを感じるのではないでしょうか。
 主人公は一度休暇で故郷に戻っていきます。そこで主人公は、自分の認識と遙かにずれのある人々と話すことになります。彼は苦しみ、帰ってきたのを後悔する程でした。戦場は行く時だけでなく、戻ってきたときにも隔たりを感じさせるのです。
 この作品の後半、ドイツの敵国であるロシア人の捕虜たちの生活に触れられた箇所があります。彼らは捕虜だけに、惨めな生活を送っています。しかし敵だからと言って罪人なわけではない。そこで主人公は、彼らに何の罪もないことを知るのです。
 多くの命があっけなく散っていく。次々死傷していく仲間たち。兵器の進化に伴い、人の命が軽くなっていくのを感じさせられます。第一次世界大戦がどういうものだったか、如実に書かれています。
 作者はこの小説を「ある時代を報告する試みに過ぎない」と書いています。しかし戦争というものは事実を突き詰めるほど反戦への認識を深める力があるのです。
 戦争の時代を生きた一兵卒の物語を、是非一度手に取ってみて下さい。

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