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小説(?) 十年憤りの文書

公開日: : 小説

「十年憤りの文書」
 憤りを覚えず一日を終えたことなど、この十年間一度もなかった。
 特別毎日酷い目にあっているわけではないが「物凄く嫌なこと」を思いだせばそれはもう嫌な日である。この負の記憶は時を経てもなんの解決もせず、未だに僕の心を蝕み続けているのだ。
 大学時代、僕は統合失調症を発症した。
 ということになっている。
 実際に症状はあり、薬も飲んでいるが、ただ一人僕だけはそれを信じていない。
 信じられないから無様な真似をするし、無駄に苦しみ続けている。
 僕が何を言いたいかというと、僕は病気にさせられた、ということだ。
 同じアパートの住人に嫌がらせをされ、それが学校中に広がって、追い詰められた結果病院にぶち込まれた。僕の中ではそうなっている。
 退院した僕がまずなにをしたかというと、ネット上に自分の体験談をさらし、いろんな人に話を聞いてもらった。
「辛い目にあったね」と真面目に聞いてくれる人もいれば、「君さっきから何言ってるの、頭おかしいね笑」などと馬鹿にしてくる人もいた。だがネット上で誰が信じて誰に馬鹿にされようと、なにも変わらないし解決しないのだ。心の傷を増やしただけだった。
 この時点で、僕のことを超マイナス方面の危険人物と思われるだろうか。
 まだ病気が治っていないんだ! 君は休んだほうがいい! と諭されるかもしれない。
 ただ僕は病識があるので、これ以上治りようがない。それでも入院しなければならないのならば、もう一生出てこられないだろう。
 集団ストーカー、という言葉がある。僕はこの言葉が本当に嫌で、みるだけで悲しくなってくる。
 検索エンジンで検索すると、被害者の会や事例が沢山出てくる。
 本人たちはとても真面目に書いているのだと思う。けれど、きっと多くの人に馬鹿にされる。電磁波を使って嫌がらせ、本当だとしたら驚くべきことだ。でも信じられない。
 ただ僕はその不自然さに思うことがある。彼らは単に「説明できない」だけなのではないかと。
 自分に降りかかっている災難がなにか、特定できていないのではないだろうか。
 僕もそうなのだ。誰がやっていたのかもおぼろげだし、どのように嫌がらせをされているのかわからない。
 逆に考えれば、説明できない以上、病気と認定されるわけだ。
 もしあなたが正体不明のテクノロジーで自分の日常生活を脅かされていた場合、誰に相談して、どのように解決するか、見当がつくだろうか。警察に相談しようにも、どのように説明できるだろう。
 僕の答えとしては、逃げるしかない。僕は人間関係のしがらみで逃げられず、自分の生活を大事にして我慢するあまり、最悪の結果を招いていしまった。
 そのうえ僕は人に頼るのが下手だった。もっと早く身近な人間に相談すれば、被害は微小で済んだかもしれない。
 なんら手を打たず、苦しみ続けた結果をここに記しておく。
 統合失調症を発症し一ヶ月入院。幻聴は消えず、薬の副作用で尿がでなくなる。目玉が釣り上がり外見が著しく悪化。集中力が減退し、漫画本を読むことすら苦痛になる。
 田舎に戻ったあと、三ヶ月間、家でなにもせず引きこもる。幻聴が悪化し、再発。三ヶ月入院する。その間、目が強制的に閉じる発作が発症。その後、電信柱に顔が衝突し怪我をする。
 その後、二年間同様の症状に苦しみながらリハビリを続ける。
 上記の症状が改善されたあと、新たに突発性の身体の不調が持病となる。正体不明。
 名前も知らない、同級生だった連中のことを思う時がある。今、幸せなのだろうか。大学でどんな経験をしたのだろうか。いなくなった僕のことなど思い出しもしないのだろうか、と。
 あの時、名前だけでも知っておけばよかった。今だって探そうと思えばなんとでもなるのだろうが。
 僕は結局仕返しもできず、取り返しのつかない記憶に憤る毎日をおくっている。
 この文章はせめてもの戯れだ。長生しようが早死しようが、この怨念を墓まで持っていくよりは、なんらかの形で現世に残しておきたかった。それで何かが変わるわけではない。ただそこに残っているだけで満足なのだ。
 拙い文章で申し訳ないが、これにて失礼。(了)

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