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2018年おきなわアビリンピック遠征 3~5日目

公開日: : ホームページ, 大会

いつもなら4日で終わるアビリンピック、今年は一日多い。大体二日目にやることをさらにもう一日増やすことで、競技スペースをなんとか確保している努力が見受けられた。三日目、前座の競技が終わったところで、ホームページの競技スペースが作られていった。何度も出ているせいか、何度も戦ったライバルたちと結構仲良くなっていて、新進気鋭の若者Oさんやデザイン力に優れた女性のSさんが親しく声をかけてくださった。彼らが持ってきた事前課題を吟味したところ、みんなしっかり作ってきていて、特に広島の女の子の作品は滅茶苦茶凄かった。自分が敵うところなど一つもないように思えた。事前に持っていた自信は全部吹っ飛んだ。妄想というものは現実でコツンと叩かれれば雲散霧消してしまうのだ。

トンカツの画像
その日の夜は、無理やり自分を奮い立たせるためトンカツを食べた。これで勝つる! とか冗談を言って県の職員と選手を笑わせた。どうやったら戦えるかをずっと考えていたが、答えは出ず。長風呂に入って音楽をかけて、必死に寝られるよう努力して四時間寝た。


ホームページ競技というものは、基本的にパソコンに向かっているだけで、傍から見たらこいつらなにやってんだろっていう観てて面白みのない競技なのだが、今年から競技者が作業しているパソコンの映像がライブビューとして観客が見られるようになった。滅茶苦茶恥ずかしいだろと思ったが、間違いなくその方が見ていて面白いのも事実だった。競技開始が近い。

いろいろ考えてみたが、僕が勝負できると言ったら技術しかない。デザインで負けているのなら、本番の創意工夫でなにかしら上に行かねばならないと思った。


競技前の写真。沖縄は滅茶苦茶暑いので、ユニフォームは着ていられなかった。後ろにいるのは美人のライバル選手。

競技は三時間。合間に一時間休みが入る。僕はまず前半に課題で出された内容を全て作ってしまう気でいた。後半で自分の持っている狙いを実現すればいい、という話だった。劣勢は感じていたが、戦わなければ勝ち目は全て消える。とにかくやるしかないのだ。写真を三列ずつ並べ、機能がしっかり動いているかどうか確認し、急いでもう一つの課題を構築して、昼休みに入った。

昼休みの間も、実現しようと思っているプログラムのことをあれこれ検討していた。弁当は戻さないようによく噛んで食べた。このよく噛んで食べるというのが重要なのだと、ようやくこの歳になってわかってきた。エネルギーというものは、飯をしっかり咀嚼して取り入れないと意味がないのだ。命というものはそういう意味でも大事にするものなのだ。みたいなことを取り留めもなく考えていた。休み時間だけどとても休める気になれなかった。まさしく闘志がみなぎっていた。

後半。プログラミングの段階に入った。他の人がやらないであろうことを、二つやった。論理関数を使うだけでも、プログラミングは相当面白いことができる。一つは時間をかけて完璧に作ったが、もう一つの方がなかなかうまく動かない。激しくトライ&エラーしていると、観客の方から「すげえ……」と声が聞こえた。僕以外の人の作業風景を見ていたのかもしれないが、勝手に励みにした。そして三時間で、やりたいことは全部やりおおせた。

ステーキの写真
その日の夜はステーキ。あの出川哲朗も食べたという? 肉々しくておいしゅうございました。沖縄って千円ちょっとでこんな豪華なステーキ食べられて本当に羨ましい。


家族への土産にはバームクーヘンを買った。試食で食べたものが全て最高だったのが決め手。

そして次の日、閉会式。一割も勝ち目はないと思っていたが、5パーセントくらいは期待していたのだ。他の競技の発表があったりすると、あの人は残念だったな……とか、本気で大会に取り組んでいた他県の方を意識することもあった。金賞をとって号泣する若者たちが、輝かしく見えた。自分が金を取ったらどうなるのだろう、と思った。大いに笑うだろうか、泣くだろうか、いずれにしろ、たまには自分に酔いきってもいいのではないかと、自分に言い聞かせた。
ホームページ職種の発表まで、本当に長かった。苦行だった。しかし発表が始まると、苦しみは消え去り、驚きに息を呑んだ。努力賞、銅賞を仲のいいOさんとSさんが受賞したのだ。銀賞発表の時、一瞬、来るんじゃない、と呟いた。しかし銀賞に自分の名前が載ると「やっぱそうだよな」と笑顔がこぼれた。金賞の名前は見られなかったが、後から聞いた話だとやっぱり例の女の子だったらしい。一度も話せなかったけど、強かったです。完敗でした。

閉会式の写真
講評はちょっと気が重かった。白髪で笑顔の素敵な審査員のおじさま。僕が席に座ると「佐久本さんは今回金賞狙ってたね」と声をかけてもらった。
いろいろ課題ができた。去年から直そうと頑張っていたところは、実際には至らなかった。来年のことなど、もう考えられない。この二か月は、全ての余暇を費やしてしまったのだから。
だがSさんに、来年愛知の大会来てくださいね、と言われると、心に迷いは沢山あった。全力で戦った勝負は、間違いなく楽しかったのだ。

空港では、飛行機が遅延して、待ち時間が沢山あった。同じ便に乗るOさんと今回の反省会をした。2、3、4で仲のいい方と並べたのは嬉しかった。

飛行機に乗って、羽田空港に降りると、白髪の審査員のおじさまに声をかけられた。
「佐久本さん、僕は今回で終わりです」
「えっ」
長野大会から、この人にはお世話になっていた。いつの間にか、この人に金をとったというのが、夢の一つになっていた気がする。
「佐久本さん、来年も続けるよね?」
別れ際に、彼は呪いの言葉を残していった。しばし僕は、立ち尽くしていた。

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  • 佐久本庸介と申します! 山梨県からひらきこもりを掲げ、色々なことにチャレンジしていこうと思っています。第一回クランチノベルス新人賞受賞。ディスカヴァートゥエンティワンより青春ロボットドラッグカラーの空という小説を出版しております。皆様どうかよろしくお願いいたします!
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