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みんなのための精神病小話4-副作用

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生きていれば何かしら重い負担を抱えて、疲れ切っている人も多いでしょう。そんな状態でこれ以上負担が増えたらたまらない、と私は思います。でも現実にその時は必ずきます。それがよりによって精神病だったら大変です。何が大変かって治らないからです。そして少しでも良くしようと努力すると、思わぬ壁にぶつかるのです。

皆さんこんにちは。今回は薬による副作用について話をさせていただきます。
これは恐らく、精神病患者にとって症状の次につきまとってくるものです。何しろ精神病は風邪とはわけが違います。多くの精神障がい者は一生かかっても完治せず、半永久的に薬を飲み続けるわけで、当然副作用は避けて通れません。

まず私の知っている限りの副作用を並べてみます。
「集中力がなくなる、無気力になる、体が硬くなる、手が震える、足が無意識に揺れる、歩き方がおかしくなる、握力がなくなる、瞬きが長くなる、顔が上に引っ張られる、性欲がなくなる、尿が出なくなる、吐き気、便秘、頭痛、不眠、喉が異常に渇く」
上記のうち、四つを除き私は全て体験済みです。特に尿が出なくなるのはまさに拷問でした。何か蓋でもされているようで、尿道の先端部分にたまった尿が、もれそうなのに出ない、その状態のまま少しもでない。こんなものに耐えられるはずがありません。007でもこれをやられたら、ことごとく重要機密を吐いてしまうと思います。
まあ私の例はひどい場合でして、あまり参考にはならないかもしれません。

誰もが悩まされる症状としては、やはり無気力になり、なにに対しても手がのびないことでしょうか。元々頑張り屋だった人が、治療をはじめて以来、急になにもしないで寝ていることしかできなくなったりします。学生ならば、教科書なり、小説なり、書物を読めなくなるのは問題ですよね。仕事だってそんな状態で無理にやろうとしても苦行と同じです。それで家族の理解がない場合、少しは働け、だの、将来のことを真面目に考えろ、だのと非難を受けることもあります。これは家族を病院に連れていって話をしてもらう必要があります。ここの段階で停滞してしまう人は多いのではないでしょうか。
手が震えるのもよくある症状です。これも困ったもので、字を書くにしても震えては上手に書けないし、酷い状態になると箸を何度も落としたりします。常に震えているせいで、震える動きだけで歯が磨けてしまいますが、これは利点とはいいません。病気のことをよく知らない人から、その震える手で独特の絵のタッチを出せるぞ! といわれたこともありますが、当然挫折しました。利点など一切ないのです。
不眠も患者の多くが体験する症状です。決められた時間になかなか寝られず、時間を無駄にしまいと起きていたりして、生活習慣が乱れ昼夜逆転してしまうこともしばしばあります。生活習慣の乱れは病気にもあまりよくないです。更に友達のFさん自身から聞いた体験談では、ある時期十一日間連続で寝られなかったというのです。昔TVで紹介されていたのですが、あるラジオ番組で三日間眠らずトークをしていたDJが、それ以来、明るかった性格が歪んでしまい、粗暴になり、DJの仕事もできなくなり、人生が滅茶苦茶になったという話がありました。Fさんに至ってはそれより八日間も長く寝ていなかったわけで、想像するだけで痛ましいです。Fさんの性格が大きく変わったという話を聞かないのが救いです。

様々な副作用は患者を酷く苦しめます。吐き気や頭痛、日々の生活が嫌になる症状が多々あります。中には性欲が全くなくなってしまうこともあります。汚い話になるので、ズバリそのものはいいませんが、自分の中でなにかが欠落してしまったような感覚を覚えるのです。その空白感から、自分はもうまともな人間ではないと思うに至るのです。
これらの問題を完全に解決するのは困難なことです。元を断つという意味で、薬を全部止めてしまうことを考えてしまいがちですが、これは病気の悪化、再発の原因になるので絶対にやってはいけません。その結果、救急車で病棟に叩きこまれるケースはよくあることです。
副作用から「逃れられるかもしれない術」は、私が考えるに三つあります。一つは薬の組み替えです。私は病気そのものが安定していくにしたがって、薬を徐々に減らしていった結果、様々な副作用がなくなりました。しかし薬を抜くのは賭けの要素があり、慎重に行う必要があります。私は副作用に苦しんでいた当時、主治医にとにかく薬を減らしてくれと必死で頼んでいましたが、そこは主治医が冷静で、長いスパンをかけて薬の調整を行いました。今思うと立場的にも丁度いいバランスを保っていたと思います。もしくはメインの薬、向精神薬を別の種類に変更することも考えられますが、この場合、前の薬が抑えていた部分の反動がくるので、それこそやたらと実行に移すことはできないです。
もう一つは副作用止めを飲むことです。これも「副作用止めの副作用」が出てくる場合もありえるのですが、それでも体質に合えば有用な薬です。私はそれで手の震えは止まりました。あと前述の、尿が出ない、漏れそうなのに出ない拷問さながらの症状は、さんざん苦しんだ末に、ウブレチドという尿管を広げる薬をもらった結果、急速に改善しました。ただ、副作用止めも症状に合わなければ効かないことも多々あります。効きが患者によって違うので、必ず成功するというものではありません。でも失敗して入院に追い込まれたという話も聞かないので、比較的リスクは少ないと思います。
最後の一つは、副作用自体に慣れてしまうことです。先ほど話したウブレチドなどは、退院してからかなり早期に抜くことができました。副作用に慣れた結果だと思います。これも流動的で体質の問題もあり、ずっと慣れない場合もあります。

以上、必ずこれで副作用は治る、というものは一つもありません。しかしこれらの要素を踏まえて、格闘していくうちに、自分が許容できる範囲まで回復できる可能性はあります。意外と一年くらいでよくなってしまう場合もあるし、私のように三年以上かかる可能性もあります。
一番重要なのは投げてしまわないことです。もう一度書きますが、薬を主治医の許可なしに抜くと、一時は調子がよくなっても大方再発してもっと酷くなります。副作用も病気と同じです。病気とは付き合うだけではなく、闘わねばならないものなのです。負けてはいかないものです。その辛さはこれ以上なくよくわかります。でも、自分の許容範囲までもっていければ、余裕も出てきます。諦めないでください。かくいう私の性欲はばっちり回復しましたから……。

最後にちょっと体験談を。
二回目の入院の時、幻聴に脳神経をやられた上、薬の副作用で身体中が震えて、介護なしでは食事もとれない状態でした。口にフォークで鮭を看護師さんに入れてもらっても服にボトボト落とし、片腕には点滴が……。
逆に考えるとそんな状態から時間をかけて社会復帰できたわけです。
では今回はこの辺で、次回はリハビリについてお話しさせていただきます。それではまた!


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  • 佐久本庸介と申します! 山梨県からひらきこもりを掲げ、色々なことにチャレンジしていこうと思っています。第一回クランチノベルス新人賞受賞。ディスカヴァートゥエンティワンより青春ロボットドラッグカラーの空という小説を出版しております。皆様どうかよろしくお願いいたします!
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